連載 みんなで活かそう! 私たち保健師のコアバリューとコアコンピテンシー・1【新連載】
「健康の社会的公正」「人権と自律」「健康と安全」
岩本 里織
1
,
麻原 きよみ
2
,
岸 恵美子
3
,
臺 有桂
4
,
松本 珠実
5
,
三森 寧子
6
1神戸市看護大学大学院
2大分県立看護科学大学
3東邦大学大学院
4神奈川県立保健福祉大学
5日本看護協会
6千葉大学教育学部
pp.324-332
発行日 2024年8月10日
Published Date 2024/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664202087
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コアバリュー1「健康の社会的公正」
定義 すべての人/コミュニティに生じる健康格差や健康の不公正を是正し、健康に資する公正な社会環境を構築する。
岩本里織(神戸市看護大学大学院教授)、麻原きよみ(大分県立看護科学大学学長)
教えて、これってどんなコア?
社会的公正(social justice)の「公正(justice)」とは「公平で偏っていないこと」(大辞林)です。justiceは「正義」とも訳されます。「公正」と「正義」は厳密には政治思想の立場により異なっていますが1)、ここでは同義語として扱います。
「社会的公正」は、生命医学の倫理原則の一つであるjustice(公平に行うこと、平等な人々を公平に扱うこと)を社会に応用したものです2)。全ての人々が公平に扱われる、そんな公正な社会であることです。社会的公正が機能しないと,貧困の増大、健康課題の増加,経済格差や健康格差といった形で,健康の社会的決定要因に直接関わります。社会的公正において、人々にとって公平であるのは、資源(法、制度、物、人、金銭、情報、場など)と、それらにアクセスする機会や条件などです。公正な社会であるためには、法律はいかにあるべきか、人々の権利や義務、自由をどのように尊重するか、所得や富をいかに分配するかなどを考える必要があり、それが政治哲学・思想(Justice論)3)につながります。
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