- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
現在,わが国の高齢者人口は3384万人で,総人口に占める割合は26.7%となっている1)。また,平均寿命の延伸に伴い,健康寿命の延伸が重要な課題となっているが,わが国の男女の健康寿命はそれぞれ男70.4歳,女73.6歳となっており2),平均寿命との差の約10年間を何らかの日常生活上の制限を受けて過ごすことが考えられる。そのため,健康寿命の延伸を図る一環として,厚生労働省が中心となり健康日本21(第二次)が推進され,各地では介護予防事業が実施されている。
わが国においても,地域在住高齢者に対する運動介入による運動機能3-5)や健康関連QOL6)の維持・改善が報告されている。また,転倒恐怖心の改善7)や痛みの軽減8)を図れたとする報告もある。このように,高齢者に対する運動は,程度の差はあるものの健康に良い影響を与えると考えられる。さらに,閉じこもりとその予備群では非閉じこもり群よりも体力が低いとの報告9),運動器機能向上事業において,継続群では身体機能の改善が認められたものの,脱落群ではバランス能力や移動能力が低下していたとの報告10)から,体力や運動機能の維持・向上が閉じこもりの予防や予防教室への参加阻害の予防になる可能性があると考えられ,高齢者の運動機能の維持・向上とそれを図るための社会的資源の提供が重要であることが理解できる。
以上のように,運動介入が運動機能や精神機能,QOLの維持・改善に影響を及ぼすことは明らかであるが,橋立らは11)高齢者に対して,筋力増強運動とそれを含んだ機能的トレーニングの効果を検証し,機能的トレーニングで歩行機能と主観的健康感の向上が認められたとしている。このように,単一の運動種だけでなく,複数の運動介入を実施することで,運動機能の向上に加えて精神面(主観的健康観など)にも良い影響を与えることが考えられる。
そこで,特定高齢者の運動機能および健康関連QOLの維持・改善を目的に,マシントレーニングに加え,バランストレーニング,応用歩行を含めた運動機能向上プログラム(以下,プログラム)を実施した。その活動内容と,運動機能および健康関連QOLに見られた影響を報告する。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.