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はじめに
近年,わが国の肥満者は増加傾向にあり,軽度な肥満者のなかにも疾病を合併したものが多く,内臓脂肪型肥満,インスリン抵抗性,高脂血症,低HDLコレステロール血症,高血圧を合併した病態である代謝症候群(metabolic syndrome)に対する予防対策の重要性が課題となっている1,2).その予防対策として体重減少が有効とされており3,4),効果的な体重減少プログラムの開発が重要な課題と言える.
肥満の改善には,専門家による食生活の改善や運動処方は短期的には良好な結果を示すものの,長期的には冠動脈硬化疾患の発症や死亡率の低下に結びつかないといった報告がある5).このため,基本的な食生活や身体活動などの生活習慣を改善するための行動変容が重要となり,ヘルスプロモーションの理念に基づき,対象者自らが自分の身体特性を知り,生活習慣の改善方法を学び,自発的に実行する行動変容プログラムの開発が必要とされている6).そこで,筆者らは「健康学習と自己決定に基づく肥満改善プログラム」を開発し,減量とともに血圧やLDLコレステロールなどの医学・生理学的要因を中心にその有用性と適応性7,8)を明らかにした.
一方,医学・生理学的要因にのみ焦点をあてるのではなく,対象者が継続的に行動変容を惹起させるには,心理・社会的要因に基づいたプログラムを検討することの重要性が指摘され9,10),減量プログラムの効果には自己効力感が関連しているとする報告が散見される11).また,肥満者の生活の質の低下も,以前から報告されている12).現在,体重減少を目的に,外科的な介入を行った際の健康に関連した生活の質(Health-Related Quality of Life;HRQL)向上に対する多くの検討13,14)が行われてきているものの,生活習慣に働きかける行動変容プログラムによる介入がHRQLに影響を及ぼしたとされる報告はきわめて少なく,さらなる検討が重要な課題となっている15).
そこで,本研究の目的はわれわれが開発してきた肥満改善プログラムがHRQLに及ぼす影響について評価すること,ならびに,体重減少に関連する心理・社会的要因を検討することである.
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