研究
心の健康問題による休職者の復職支援における組織の課題―事例対応を経験した中規模事業所の産業看護職の視点から
富永 真己
1
,
西村 美八
1
,
南 朗子
1
1京都橘大学看護学部
pp.234-241
発行日 2015年3月10日
Published Date 2015/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664200125
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■要旨
本研究は,心の健康問題による休職者の復職支援における組織の課題を,中規模事業所の産業看護職の視点から明らかにすることを目的とした。心の健康問題による休職者に復職支援ツールを用いて対応した経験をもつ中規模事業所の産業看護職4名を対象に,インタビューを実施した。得られたデータを質的帰納的に分析し,事例対応に関わる組織の部門の切り口から,カテゴリーを分類・整理した。
結果,健康管理部門については,復職判定等で中心的な役割を果たす『産業医の不十分な専門性と姿勢』とともに,『事例の理解と復職判定基準の必要性』と『困難事例の対応方法の未確立』が課題と認識された。経営層については,『浸透しない復職支援システム』が,また現場と経営層については,『産業保健スタッフの中立的立場と関わりの認識不足』と『休職者への対応のばらつき』が休職者の復職支援を行ううえで障壁となっていた。さらに現場と健康管理部門については,『現場と産業保健スタッフの相互理解の不足』があり,『適切で系統的な連携の必要性』や『互恵関係から成り立つ密な連携の必要性』『復職先の職場の状況を踏まえた支援の必要性』を産業看護職は課題と認識していた。
以上より,心の健康問題による休職者の事例対応における組織の課題として,産業保健スタッフの有効活用とともに,現場と組織が求められる役割と責任を果たす重要性が示唆された。
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