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はじめに
■わが国における生活習慣病
わが国の死因において,生活習慣病は1958(昭和33)年から上位となり,2009(平成21)年には56.6%を占めている。さらに,生活習慣病に関わる医療費は一般診療医療費の33.4%(平成18年度国民医療費)を占め,生活習慣病対策はわが国の最重要課題となっている1)。
このような現況から,「21世紀における国民健康づくり運動」が推進されている。「運動・スポーツ」は,その重点分野の1つである2)。人々のライフスタイルは健康維持に大きな影響を及ぼし,とくに持久的な運動は,循環器系・代謝系や呼吸器系への刺激となり,糖・脂質代謝異常および循環器疾患の予防,各症状の軽減的効果につながるとされる3)。
しかしながら,2008(平成20)年の国民健康・栄養調査における運動習慣者の割合をみると,全男性の平均は33.3%,全女性は27.5%である4)。2003(平成15)年と対比すると割合は増加しているものの,運動習慣者はいまだ半数にも満たない状況である。
このように,生活習慣病予防対策の推進にもかかわらず,成人期の運動習慣者は増加に至っていない。そこで,これまでの標準的な支援方法ではなく,成人の運動習慣者を増加させる新しい介入方法の研究が必要であると考えられる。
■先行研究の検証
運動継続に関する研究は,諸外国においてTranstheoretical Modelの行動変容モデル5)を中心に,縦断的な視点から運動継続を研究する重要性を指摘している6)。ロールモデルはBanduraの社会学習理論で論じられている7)。人間の社会的行動の習得と変容は,「観察学習」によって生じると指摘し,その現象を「モデリング」と命名している。
そのなかで,専門職者のロールモデルに関する研究では,未習熟者が行動を変化させ専門性を高めるというロールモデルの有用性が検証されている8)。一方,運動のロールモデルは,身体活動の継続や体重減少などの「他人の成功体験を観察させ,肯定的な教示を与える」ことで,運動実施への確信を高め運動維持期に行動を変容させると指摘された9)。
しかしながら,運動継続ロールモデルを活用した実践研究はほとんど見られなかった。そこで,カタログ化されたロールモデル集を作成し,ロールモデル活用の保健指導の実施結果から,今後の保健指導のあり方の示唆を得るため,調査に取り組んだ。
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