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はじめに
市町村には,住民参加による「健康日本21計画地方計画」(以下,「地方計画」)の策定が求められている。策定では,住民の健康を目標において住民の主体的参加や根拠にもとづく地域診断にもとづいていることの重要性が示されている1)。しかし,実際には,これらの要件を満たすのは,市町村保健師の心理的負担や,市町村保健師が根拠にもとづく活動や評価の手法がわからないなどにより,実現が困難である。
日本看護協会発行の生活習慣病予防活動支援モデル事業報告書2)では,「市町村がモデル事業に取り組むことは,住民だけでなく習慣化した保健師の活動のあり方を改めて意識化し,課題への気づきを促すものとなった。市町村保健師と保健所保健師の相互交流のなかで,お互いの気づきを促すともに認識・確信に発展されていった。こうした気づきや再認識をしながら住民と共に支援者もエンパワメントのプロセスを歩んでいた」と報告している。これらから,策定に必要な要件を満たすためには,保健師自身のエンパワメントと支援体制が必要であると考えた。
今回われわれは,医療法改正による特定健診など,実施計画の策定および健康日本21計画中間評価の機会を捉え,これらを検討する際に必要な科学的根拠を重視しながら,地域の概況,人口動態,医療費,健康問題などの情報収集をもとに分析し,地域の健康課題を明らかにする地域診断を市町村と協働で実施した。実施の過程で市町村保健師がエンパワメントされていく様子が観察されたことから,そのやる気に影響する要素を明らかにすることで,他市町村への支援を実施する際の参考になるのではないかと考えた。
また,奈良県吉野保健所(以下,当保健所)は奈良県南部の山間地域にあり,小規模町村が多いという特徴を有している。こうした地域特性から保健師が定着しにくいことや,単数設置などによって保健師活動の充実や継続が困難であることが課題となっている。こうした状況から当保健所では,市町村支援に対して重要な役割を担っており,地域特性に応じた効果的な支援方法の開発は大きな課題である。
そこで本報告では,市町村保健師のエンパワメントに影響する要素とそれに対する保健所の支援のあり方を検討することを目的とする。
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