特集 病院空間とまちづくり
医療と健康のまちづくり
松永 安光
1,2
1近代建築研究所
2前・鹿児島大学工学部
pp.838-840
発行日 2007年10月1日
Published Date 2007/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101032
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人口減少時代のまちづくり
21世紀に入って,わが国の,特に地方都市では人口減少に伴うさまざまな現象が顕著に見られるようになってきた.中でも際立っているのが中心市街地の衰退で,シャッター街の蔓延は象徴的現象として広く知られることになった.この原因として,郊外巨大ショッピングセンターとの競合が喧伝され,結果的に2006年,いわゆる「まちづくり3法」の改正が行われたと言われている.その意図するところは,これまで郊外へ向けて拡大・成長を続けようとしてきた施策のベクトルを,都心部へ向けて縮小・集中させる方向に転換させるものであった.つまり,これまでの成長幻想に終止符を打ち,現実的なコンパクト化をめざす施策がようやく採用されたのである.
私は,これに先駆け2001年に,欧米先進諸国における都市のコンパクト化の実態調査の研究に国の科学研究費の申請をし,さいわい交付を受けることができた.その後さらにある財団から継続研究資金の補助を得て,結果的に5年間にわたる調査研究をまとめることになった.この成果は,すでに『まちづくりの新潮流―コンパクトシティ・ニューアーバニズム・アーバンビレッジ』(彰国社,2005年)として一部発表してあるが,今秋にはその続編として『地域づくりの新潮流―スローシティ・アグリツーリズモ・ネットワーク』(彰国社)を刊行する予定である.ここで研究対象とした先進諸国は必ずしも人口減少が顕著なわけではないが,国家や地方政府の財政赤字,地域格差の拡大,年齢構成の高齢化などの面ではわが国と共通する課題を抱えている.
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