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はじめに
群馬大学では,2002(平成14)年度から地域貢献事業の一環として,在日ブラジル人学校およびペルー人学校(以下,在日外国人学校)に通う児童・生徒に対して健康診断を実施してきた。この取り組みのねらいは,日本の学校保健安全法上の定期健康診断が適用されていない在日外国人学校に通う子どもに対しても,日本の子どもと等しく保健医療サービスを受ける権利を保障することである。
また,健康診断後の結果説明や日頃の健康上の悩みに応えるために,毎年,健康診断後に健康相談会を開催している。これらの活動に参加した児童・生徒は総数3000人を超える。
健康診断の実施体制は,これまでの7年間は群馬大学が主催して経費と人材を確保し,群馬県や在日外国人学校所在地の市町村の協力を得る形で進めてきた。この間,毎年,群馬県や当該市町村との健診実施体制に関わる協議を進めてきたが,県・市町村いずれも,自治体のシステムとして継続的に健康診断を主催するのは,財政的にもマンパワー的にも困難という状況であった。一方,健康診断を通じて,在日外国人学校との関係も徐々にとれるようになり,健康管理に配慮した運営をする学校も出てきた。しかし,在日外国人学校における健康管理状況を見ると,養護教諭や看護師などの健康管理を担う職員はおらず,学校差が見られていた。そして,いずれの学校も,健康診断実施の要望は高く,提供されれば協力はするものの,学校として主体的に実施することはできないという状況であった。
以上の経過を踏まえ,今後は大学が中心になるボランタリーでモデル的な健康診断から脱却し,地域システムとして定着させるための方略を検討することが求められていた。そして,そのためには,自治体や在日外国人学校が受け入れられる形で健診を実施すること,そのなかに,これまで群馬大学が蓄積したノウハウを投入して,健康診断の質を担保することが必要であった。
そこで,今回,文部科学省の委託研究として,群馬県内の小中学校の心臓検診や成人を対象とした,特定健康診査などを受託している機関に健診を委託するという形式で健診を試行した。これらの実施過程と効果の分析により,今後の在日外国人学校の健康管理における可能性や具体的な方策を検討したので報告する。
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