調査報告
震災時の一時避難可能性と累積生存からみた地域保健活動
中山 直子
1,2
,
櫻井 尚子
3
,
星 旦二
1
1首都大学東京大学院都市環境科学研究科都市システム科学専攻
2慶應義塾大学看護医療学部
3東京慈恵会医科大学医学研究科看護学専攻
pp.988-994
発行日 2010年11月10日
Published Date 2010/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101480
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■要旨
目的:都市に居住する在宅高齢者の震災時自己対応避難可能性の実態と,その実態別にみた3年後の累積生存率を明確にし,地域保健活動との関連を明らかにすることである。
方法:調査対象者は2004(平成16)年9月1日現在A市に住む65歳以上の高齢者1万6562人を対象として自記式質問紙調査を実施し,1万3195人を分析対象とした。回収率は79.7%である。震災時の一時避難可能性に関する質問は,「震災が起きたら一時避難場所まで避難できますか」とし,選択肢は「自分でできる」「介助があればできる」「できない」の3つとした。3年間の累積生存分析では,Kaplan Meier生存分析とともに,Cox比例ハザードモデルを用いた。
結果:在宅高齢者の累積生存率は,震災時一時避難可能能力に応じて低下した。また,生存を維持する要因として,男女とも震災時一時避難可能性を高め主観的健康感を維持するとともに,女性では日常的な預貯金の出し入れを行うこと,男性では地域活動を続けることが示された。
結語:都市在宅高齢者に対する非日常の防災活動と日常の健康を維持させる介護予防活動を連動させる重要性が示唆され,それらを支える地域保健活動の重要性も示唆された。研究結果の外的妥当性を高めることが研究課題である。
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