特集 学校における子どもの健康課題
児童・生徒のこころの健康問題
山下 俊幸
1,2
1京都府立洛南病院
2京都府こころのケアセンター
pp.435-441
発行日 2019年6月15日
Published Date 2019/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209163
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はじめに
厚生労働省の患者調査1)によれば,精神疾患で受療している人は増加傾向にある.2014(平成26)年には約392.4万人となり,おおむね国民の30人に1人が受療していることになる.疾患別では,気分障害,神経症性障害,認知症などの増加が目立っている.認知症を除いて,精神疾患の多くは青年期の発症が特徴的であり,早期に適切な支援や治療がなされないならば,学業面だけでなく,その後の就業や社会生活にもさまざまな影響を及ぼすことになる.このため,児童・生徒のこころの健康の保持や,こころの健康問題への早期対応は重要である.
児童・生徒のこころの健康問題としては,従来から課題となっている不登校,いじめ,被虐待,発達障害などがある.近年は,これらに加えて,ネット依存,大麻などの薬物乱用,自死,性別違和など,今日的な課題も少なくない.児童・生徒のこころの健康問題が学校における健康問題の重要な課題の一つとなっていることは論をまたないであろう.これらの課題に対応するためには,学校におけるさまざまな取り組みが重要である.一方で,児童・生徒のこころの健康問題は子ども自身の問題だけではなく,周囲の環境から子どもが受けるストレスにより生じていることが多いので,家庭や学校だけで完結するものではなく,多くの関係機関と連携・協働しながら取り組む必要があると考える.とりわけ精神保健関係機関との連携が不可欠と考えるが,必ずしも十分な連携が行われていないのが現状であり,今後の取り組みが求められている.
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