調査報告
乳児院入所ケースからの分析―児童虐待予防活動に期待すること
榊原 文
1
1島根県中央児童相談所相談支援グループ
pp.647-653
発行日 2010年7月10日
Published Date 2010/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101421
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■要旨
本研究は,島根県中央児童相談所で措置したうち,2008(平成20)年度に乳児院に入所していた23児童(18世帯)のケース記録から,乳児院入所に影響したと考えられる要因を明らかにし,母子保健活動を中心とした児童虐待予防活動をいかに強化すべきか考察することを目的とした。
個別ケース記録から入所に影響したと考えられる要因を抽出し,分析項目(家族形態,妊娠について,子ども側の要因,親側の要因,養育の問題,生活上の問題)にそってカテゴリー化した。
分析の結果,乳児院入所に影響したと考えられる要因として,【未婚妊娠・若年出産】【子どもの先天的障害・行動情緒問題】【1歳未満】【保護者の精神・知的障害】【保護者の反社会的行動】【保護者の被虐待歴】【経済的困窮】【保護者のDV】の8つのカテゴリーに分類でき,複数のカテゴリーが重複していた。
母子保健活動に期待することとして,(1)思春期保健対策の強化:養育環境をベースとした性意識の歪みや精神発達の課題に対応するための思春期保健相談の充実,思春期の心のケアに対応できる医療の確保と連携体制の強化,(2)周産期医療との連携強化:要保護性の高いケースへの出産前からの医療連携や関係者ケース協議,(3)母子保健と精神保健の連携強化:児童虐待の早期発見に努め,早期に母子保健と精神保健の連携を図ること,(4)生活保護ケースワーカー・女性相談機関との連携:養育基盤を整えるために生活環境の安定を最優先することが考えられた。
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