連載 保健師さんに伝えたい24のエッセンス―親子保健を中心に・17
児童虐待をめぐって
平岩 幹男
1,2
1国立成育医療センタークリニカルアドバイザー
2Rabbit Developmental Research
pp.705-708
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101879
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はじめに
児童虐待は長年に亘って親子保健にとっては大きなテーマです.児童虐待の通報件数はご承知のようにうなぎのぼりに増えていますし,児童虐待による死亡事例の報道も後を絶ちません.実際に児童相談所に寄せられる相談件数も平成20年度には全国では42,662件で,これは平成6年度の相談件数の20倍以上です.警察庁の発表では平成15年に42名の児童が虐待により死亡に至っており,2歳未満が50%(乳児がそのうち60%)です.ご承知のように乳幼児の虐待死の80%は身体的虐待で,残りはネグレクトや怠慢となっていますが,ネグレクトの場合には,虐待であるかないかを見分けることが困難な場合もあります.悲惨な報道が繰り返されるたびに,児童虐待の早期発見と早期介入が唱えられますし,そうした施策も行われてきていますが,それによって児童虐待が激減したということにはまだつながっていません.
児童虐待は英語では「child abuse」ですが,子どもの人権への侵害であるということからは,「子ども虐待」という表現も用いられています.児童虐待の防止等に関する法律(通称:児童虐待防止法)は平成12年に制定されましたし,それによって児童虐待についての社会的関心も高まりましたが,親子保健の現場では,児童虐待の問題を考えない日はありません.平成16年10月の改正によって,児童虐待の定義を児童への人権の侵害と明確に定義し,より厳格かつ広範囲とするとともに,虐待を受けた子どもたちへの支援についても明確にされています.
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