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●今号の編集を進めている4月下旬,メキシコで豚インフルエンザが人に感染し,さらにそれが人から人へ感染したとの情報が伝えられた。WHOは4月28日,フェーズ4を宣言し,日本でも首相をトップとする「新型インフルエンザ対策本部」が設置された。ゴールデンウィークを前に,全国の保健所を中心に電話相談の対応が開始された。そして4月30日には米国で死亡者が伝えられ,WHOはフェーズ5を宣言し,世界的大流行の兆しを示唆した。
感染の仕方はこれまでのインフルエンザと同じと見られるため,うがいや手洗い,マスクの着用など,予防や感染防止対策は基本どおりと考えられる。万一にも加工された肉からの感染は考えられないので,今後は,信憑性のない情報やうわさに惑わされないよう,各機関が正確な情報を提供しつつ,冷静な対応を呼びかけていくことになる。
今回は,感染源が空を飛ぶ鳥でなく,地を歩く豚だったこともあり,パニックは起きていない。しかし,多くの人が航空機で世界中を飛び回る時代に,このような感染症の流行を食い止めることは,今後ますます難しくなり,正確な情報と冷静な対応がますます必要となる。(杉之尾)
●この編集後記を書いている4月29日,エジプトでは新型インフルエンザ対策の一環として国内飼育豚の全頭殺処分(約20万頭)が決まりました。2004年,アジアで鳥インフルエンザ(5H1N型)が流行した際には鳥を1億羽以上殺処分したそうです。今号が発行される頃には,状況は好転しているでしょうか。
人命は最も尊いとされているので,エジプトの豚はどこかの店頭にならび私たちがおいしくいただくこともなく,やむをえず処分されます。私たちが決めた,ヒトに食べられるという目的を全うできなかったことに対して豚自身がどう思っているのかはもちろんわかりません。
各地で新型インフルエンザに関する相談窓口が設置され,「スーパーの豚肉は食べてもいいのでしょうか」など,地域住民からの相談対応にお忙しい読者の方もいらっしゃるかと思います。すでに亡くなられた人間や,鳥や豚のためにも,適切な対策を講じ,被害を最小化していきたいものです。
私個人ができることは,しっかりやっていきます。会社から帰ったら手洗いとうがいの励行,豚カツを食べるときには「いただきます」を忘れずに。(長谷川)
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