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●「なるほど」と胃の腑に落ちた思いのした会合であった。会合とは,さる5月20日新潟市の朱鷺メッセで行われた日本看護協会保健師職能集会のことである。「なるほど」というのは,集会のなかで多くの発言者が共通して語っていた「みて きいて・つないで うごかし・つくって みせる」という言葉のことである。
弊誌の担当になってから,しばしば耳にしてきた言葉で,当たり前のように共通して語られることに気づきながら,それは私にとって,何時から,何処で,誰が,どのように決めたのか,が不明な言葉であった。
専門職の間で語られる言葉は専門職同士が理解できれば良いし,ときに専門職者以外に簡単に通じてしまうと具合の悪いこともあるので,それゆえに専門用語の存在の意義もあるが,逆のケースで,専門職以外にも通じると思ってそのまま使ってしまうと,コミュニケーションに齟齬をきたしてしまうだろう。
私たち編集者が使う言葉のなかにも,出版に携わっているからこそわかる専門用語はある。そのなかで,いつのまにか読者が理解できないような編集後記を書いていたということのないように気をつけたい。(杉之尾)
●私が保育園の年長だったとき,片思い中のクラスメイトが「右利きの人が好き」と友だちとおしゃべりしていたのを盗み聴きました。当時左利きだった私は,その理不尽さを受け入れつつ,ひそかに右利きになるべく努力したものです。人が行動変容する契機は実にさまざまで,変えることでメリットがあるからというだけではなく,ただなんとなく気が向いたから,ということもあります。佐甲論文の「DATEモデル」のくだりを読んでいて,遠い昔のことを思い出しました。コミュニケーション能力の重要性という表現自体,正直何度も聞いているよ,という読者の方もいるかと思います。「言うは易く,行うは難し」というか,できる人は言われなくともやっている。そういった暗黙知の類を,本特集ではコミュニケーションの達人にできる限り具体的な場面を想定してご執筆いただきました。熟慮の末,あるいはなりゆきで選んだ道のつらなりが人生だとするなら,対象者がその道々で出会う保健師とのコミュニケーションはこれまでの自身の歩みを振り返らせ,より健康的な到達点に向かって行動していく貴重な機会になります。弊誌も保健師の方々に有益な情報をお届けできるように,コミュニケーション能力を高めていければと思います。(長谷川)
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