連載 対応困難ケースに出会う保健師のためのメンタルヘルスの知識と技術・10
Clinical Conference 3:うつ病と抑うつ状態
姫井 昭男
1,2
1大阪医科大学神経精神医学教室
2大阪精神医学研究所新阿武山クリニック
pp.242-247
発行日 2009年3月10日
Published Date 2009/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101164
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はじめに
いま,ビジネス街の街頭で「一番多いメンタル障害は何だと思いますか?」と質問すると,その回答として一番多く返ってくるのは“うつ”だと思われます。実際,うつ病やうつ状態で心療内科や精神科で加療中の人は非常に多いのです。また,企業内での研修や保健センターなどの公な場におけるメンタルヘルスでも,「うつ」に関しての話題が取り上げられることが多く,メンタル障害のなかでも「うつ」についての啓発が一番進んでいるといっても過言ではないでしょう。
ところが,以前の各論(64巻9-10号)でも説明しましたように,「うつ」の拡大解釈や「うつ」の氾濫が,さまざまな社会問題,とくに職場での休業にかかる問題を引き起こしています。保健師というプロフェッショナルな立場としては,一般にいう「うつ」はうつ病と抑うつ状態が混同されていることを知り,それぞれの違いをしっかりと認識して対応しなければなりません。
ここで2つの違いについて簡単におさらいしましょう。「うつ病」は内因性の“気分の病”で,何らかの負荷が原因で発症することが多いものの,まったく何の誘因もなく発症するものです。一方,「抑うつ状態」は元来は,回避し難い自然発生的な環境要因がストレスとなって起きる“神経症”圏の病気や,ベースに存在するメンタル障害が原因で起こる“状態像”という違いがあります。ですから,これらにはそれぞれの見極めや対応にキーポイントがあります。
今回は職場におけるメンタル対処技法に特化したお話になりますが,「うつ」関連で休業してしまった2ケースを例示します。その2つのケースのそれぞれにおいて,重要な着眼ポイントを取り上げ解説していきます。
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