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はじめに
われわれ医療関係者が何気なく使っている用語も,きちんと意味を知らずに使っていると思わぬトラブルに巻き込まれることもあるので,細心の注意と最新の知識が必要です。医師が患者に説明する際に専門用語を用い,それを質問され,咄嗟に上手く説明できない――そうしたお粗末な話が実際にあるのです。とくに日本は何でも略語で話す傾向があり,これは医学用語の世界でも同じですが,日本の医療現場ではいまだに日本語,ドイツ語,米語が混在しているため,語源がわからない用語でも平気で日常的に超感覚的に使っている若い医療関係者が多いのです。恥をかかないうちに,しっかりと説明できるだけの知識は獲得しておきたいものです。
さて,「メンタル障害」にまつわる新しい概念や,疾患とはいえないものの自他ともに不利益を被る問題に関わる用語は,非常にわかりにくいといわれます。また,ヒステリー,パニック,ノイローゼなどの精神医学用語が一般的な使われ方をして,実際の意味と違った新しい意味合いを付加されていくうちに,ついには間違った知識になることさえあります。メンタル障害をもつ人との関わりは他の障害者との関わりよりも,さらにきめ細かな配慮を求められます。
近年,医療職に求められる水準は高く,とくにプライマリケアや予防医学に関わる仕事をしている人に対して,一般の人たちが求めるサービスは,“過剰サービス”そのものです。またメンタル障害を抱える人たちで保健師のもとを訪れる人の多くは,さらに過剰な援助を要求する傾向にあります。当然それにはこたえられないので,それを正直に説明するだけでも反応を起こすケースがあり,「仕事とはいえ,やるせなさを感じる」という声を耳にします。保健師に課せられる職務の量が増えるなかで,メンタルヘルスの割合は今後も増えつづけるでしょう。
今月は,最近のメンタル障害のなかで,以前2回にわたってお話しした「抑うつ状態」に次いで増加傾向にある「職場不適応」について解説します。
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