一頁講座 職業リハビリテーション・8
職場適応について
藤本 幸次郎
1
1大阪府立職業サービスセンター
キーワード:
労働
,
職場適応のアプローチ
,
人間観
Keyword:
労働
,
職場適応のアプローチ
,
人間観
pp.661
発行日 1976年8月10日
Published Date 1976/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103610
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障害者が自らの障害を克服し,自分に内在する可能性を活かして「働きたい」「就職したい」という願望は,健全者のそれとは比較にならないほど強いものである.しかし,雇用者側の「雇用しようとは思わない」「障害者に向く仕事がない」などといった無理解な態度によって,彼らの願望が阻止されていることは,実に不幸なことである.
労働の意味は時代の推移によって変ってきたが,20年位前から収入のための,レジャー享楽のための手段であるという考え方が急速に人びとの間に普及してきた.果たして労働は他の目的のためだけの手段なのであろうか.ある調査によれば「働かないで暮らしていけるだけの遺産を相続しても働き続けるか」という質問に対して,80パーセントの人が「働き続ける」と答えたという.もし自分が失業したら,どういう心理状態に陥るかを想像してみるがよい.労働は社会のために価値のあるものを生産する活動であり,自己尊重,自己実現,秩序の意識などの形成に決定的な役割を演ずるものである.労働は人間の存在そのものである.障害者が「働きたい」と訴えるのは,人間として当然の願望なのである.
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