連載 「健康格差社会」への処方箋・番外編
歯科疾患における健康格差とその対策
相田 潤
1
,
近藤 克則
2
1東北大学大学院歯学研究科
2日本福祉大学社会福祉学部
pp.1038-1043
発行日 2007年11月10日
Published Date 2007/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100903
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
歯科疾患の社会への負担は,一般に思われているよりも大きい。おもな生活習慣病の国民医療費(2004年度)の金額1)をみると,悪性新生物や糖尿病の医療費はそれぞれ2兆3306億円,1兆1168億円に上る。しかしながら,歯科疾患の医療費(2兆5377億円)は,それらをも上回っている。がんや糖尿病と比較して生命に関わる重篤度は低いが,罹患率が非常に高いため社会にとっては大きな負担となっている。
この歯科疾患にも,社会経済的あるいは地域的な格差がある。そして,科学的根拠があり,健康格差の抑制効果が期待できる予防方法もすでに確立している。
そこで今回は「『健康格差社会』への処方箋―番外編」として,「歯科疾患における健康格差とその対策」を取り上げる。ここでは歯科疾患のなかでも,「う蝕(虫歯)」を中心に話を進めていく。その理由は,歯が抜ける原因を調べた最新の調査結果2)で,う蝕とその続発症による抜歯が43.6%と,歯周病の37.1%よりも多いからである。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.