特集 社会と健康
健康状態の地域格差
山本 幹夫
1
,
山岡 和枝
2
Mikio YAMAMOTO
1
,
Kazue YAMAOKA
2
1帝京大学医学部
2帝京大学法学部
pp.725-729
発行日 1988年11月15日
Published Date 1988/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207804
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■はじめに
わが国の健康状態について,その地域的な差異を統計的観点から比較するためには,総合的な健康状態を表すものとして粗死亡率,あるいは死亡状態は年齢によってかなり異なるため,その影響を補正した生命表や訂正死亡率といった,人口動態統計による死亡統計が用いられる場合が多い.このほか,疾病状態をより直接的に観察するためにとられている国民健康調査による有病率,患者調査による罹患率などにより比較を行ったりする場合もある.後者の場合には,被調査者の恣意によって疾病の有無が決定されたり受診されたりするため,主観的なバイアスの入った健康状態ということを念頭に入れておかねばならない.それにひきかえ前者の死亡統計は,幸いにもわが国の人口統計や死亡統計は信頼性が高いので,より客観的な統計値として比較に用いることができる.もちろんこの場合にも,死亡という最も重篤な場合のみをとらえているため,死亡に至らないまでも,例えばねたきりとか長期入院を伴う疾患を患っているものをとらえることができないという欠点がある.両者の関係はちょうど綱引きにも似ているが,ここではより重篤な指標としての死亡統計という面から,地域別の比較を行ってみたい.
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