連載 ニュースウォーク・87
ローマ法王の死
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.556-557
発行日 2005年6月1日
Published Date 2005/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100735
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大学1年生になって初めて英会話授業をうけた。いきなり英語で自己紹介となり,しどろもどろ。外国人教師の神父が「キミはスペイン語のほうが向いている」と宣告した。ローマ字読みで英語になっていないということだ。その挫折感から立ち直れないまま語学の成績表に「可」をずらり並べた。その大学が売りにする語学とも,カトリック教会とも遠いところに身を置いて4年間を過ごした。四十数年前の話である。
その教室を思い出しながら,バチカンから生中継されるローマ法王ヨハネ・パウロ2世の葬儀をNHK-BS放送で見入った。4月8日の葬儀に世界中からローマに集まった信者は400万人といわれ,うちバチカン周辺に詰め掛けたのは100万人。私たちにはなじみが薄い法王だが,在位26年間に129か国訪ねて「空飛ぶ聖座」と称賛された存在感は「世界最大の葬儀」によく表れている。
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