随筆 世界史の女性像・2
ローマの女性
井上 一
1
1横浜市大
pp.41-43
発行日 1958年3月15日
Published Date 1958/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910560
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前の回にお話したギリシャはバルカン半島という地中海につき出した半島の南端にありますが,このバルカン半島の西隣りにやはり地中海につき出したイタリア半島があります。この半島の西側の中央部のチベル河という河のほとりに,紀元前8世紀ごろローマという小さな町がつくられました。約700年の後々のローマは,地中海のまわり,くわしく言えば,北は今のイングランド,フランス全土,西はスペイン,南はアフリカ北海岸,東は今のイラク,イラン地方の間の地方全体を支配するローマ帝国という大帝国の首都となつていました。ローマは今のイタリア共和国の首都でもあり,今なおこの昔の盛んだつた頃の遺跡が残つています(もつとも日本の代議士さんがこの遺跡を見て<イタリーの復興は大して進んでおらんねえ>といつて笑われた話もありますが)しかし<ローマは一日にして成らず>ということわざがあるようにこの700年の間にはローマは数々の苦難を経験して来ました。今はこれをいちいち申し上げるわけには行きませんが,この困難の中でローマの女性たちが活躍した例を少しお話して見ようと思います。これは前の回にお話ししたギリシャの女性たちが,政治上余り活躍しなかつたことと対照的なのです。
ローマが作られたのは伝説によれば前の回に御話したトロイ戦争で敗れたトロイの落人たちが地中海を横切つてイタリア半島にたどりつき,ここに佳みついたためといわれています。
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