連載 ニュースウォーク・91
問われる行政の不作為 石綿健康被害
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.998-999
発行日 2005年10月1日
Published Date 2005/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100284
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ケシの実から採取したアヘンからドイツの研究者が純粋結晶を抽出したのは19世紀初めだった。ギリシャ神話の「夢の神」モルフェウスにちなんで「モルヒネ」と名付けられた。結核性カリエスに苦しんだ俳人正岡子規が痛み止めに服用した記録があるように,モルヒネは鎮静・鎮痛薬である。その「夢の神」にも死に至る「怖さ」が内在していることを,私たちはアヘンをめぐる不幸な歴史のなかで学んだ。
英国の東インド会社が清国(現在の中国)にアヘンを大量輸出し,それが乱用されて多くの中毒患者と死者が出た。清国の禁輸措置から英国との間で阿片戦争(1840~42年)が起こり,「怖い薬」として世界中に広がった。当時の日本は江戸時代末期だが,その教訓は明治政府に引き継がれ,いまも「麻薬中毒」に対する警戒心を功罪両面で引きずっている。
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