連載 働く人と健康・8―産業医学センター所長の立場から①
石綿(アスベスト)による健康障害
広瀬 俊雄
1
1(財)宮城厚生協会仙台錦町診療所・産業医学センター
pp.603-606
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101615
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はじめに
2006年7月大阪クボタの労働者そして工場周辺住民に石綿による中皮腫が発生していたというニュースを聞き,多くの国民が大きなショックを受けた.住民や労働者の健康のためと念じて活動しているすべての人たちに「反省の念」が生まれたのではないかと思われる.少なくとも私自身はそうであった.私は,医師になりたての頃に石綿を原因とした悪性中皮腫(今は中皮腫はすべて悪性とされる)に接した.折しもその少し前に石綿関連疾患の報告が出され1),今後大きな課題になるに違いない,と感じたものである.本疾患の存在を気に掛けながら活動してきたので,最近になってその悲惨な有様,報道に接し,この間発掘の活動や予防活動を有効に展開できなかったことを強く反省した.「気づいた時にこそその反省を活かす」ことがいかに大切かを痛感し,以来,石綿(アスベスト)関連疾患への取り組みを仕事の最大の柱として取り組んできた.すでにかなりの数の書籍,雑誌が出版され2~8),学会・研究会でも多くの企画が取り組まれ,学会見解も数多く出されてきたところであるが,今,新聞報道数も最盛期の1/1,000とも言われており,「風化現象」が現れている現実を前にしている.「これから被害・影響の『最盛期』なはず,今こそ!」と想い,本稿では基本的な事柄と現時点での課題について書いてみたい.
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