巻頭言
石綿肺あれこれ
成田 亘啓
1
1奈良県立医科大学内科学第二講座
pp.1049
発行日 1997年11月15日
Published Date 1997/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901580
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石綿が人類の歴史に初めて現われたのは紀元前5世紀,灯心として既に用いられていたという.欧米では石綿が実際に工業製品として用いられ始めたのは18世紀中期,本格的な石綿工業が操業しだしたのは19世紀後半,産業革命以後らしい.これに比べて,わが国ではかなり遅く,竹取り物語に現われたかぐや姫が彼女に言寄る男の一人に求めた「燃えない布」が最初で,その後は江戸時代に平賀源内が時の将軍に江戸の華の一つの火事を防ぐためにと申し出た「火浣布」であるが,実用には程遠く,実際に用いられたのは欧米文明がわが国に流入してからのことである.
石綿による健康障害は,世界で最初に1900年にMurrayによって発表され,1907年に刊行されている.
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