教育学入門講座 教育・学習のしくみとはたらき・11
教育評価について
森部 英生
1
1群馬大学
pp.388-394
発行日 1986年5月25日
Published Date 1986/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908248
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教育評価の歴史
■アメリカ
‘ある先生は,答案を2階の,梯子段の上からばらまいて,いちばん遠く下のほうまで飛んでいった答案に100点をつけ,以下,95点,90点,85点というように,5点きざみで合格点の60点まで下げてきて,一息に無作為の採点をするんだそうな.……なかには,自分がばらまくと,公平を欠くというので,奥さんを呼んで,上から撒かせるという良心的で,手のこんだことをする人もいるそうだよ’(徳永清著“カンニングの研究”)—‘妻が撒き,夫が拾う.夫婦愛のうるわしい光景である’1).2階がない人もいれば独身の人もおり,既婚者でも夫婦仲が必ずしもよくない場合もあるから,全ての大学教師がバラ撒き採点をやるとは限らないが,手っ取り早く処理できて,しかも採点者の恣意が入り込まないという点では,この採点法は確かにある種の合理性をもっているといえる.
論文式のテストは客観性を欠くのではないかということは,古来しばしば問題にされてきたところである.同じ答案でも複数人が採点すれば,点数に小さからぬ差が生じ,同一人物が採点する場合でも,時間が経つうちに規準が揺れ動いて,一服したりトイレに立ったりした後のほうが,それまでより点が甘く(辛く)なったりする.
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