教育学入門講座 教育・学習のしくみとはたらき・2
教育理念について
森部 英生
1
1群馬大学
pp.518-524
発行日 1985年8月25日
Published Date 1985/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908135
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教育理念の思想史
■国家100年の計
不幸にも万が一,子供が不治の病を宣告された場合,両親や担任教師や級友や主治医や看護婦といった周囲の人々は,その子の教育についてどう考えるべきか.死を目前に控えているのなら,せめてその子の欲しがるぬいぐるみや花やマンガ本を与えて,好きなように自由な時を過ごさせてあげたい……これは1つのやり方と言える.
そうではなく,たとえ将来社会の担い手とならないまま死んでしまうことが確実であっても,死の直前まで読み・書き・計算を教え,世の中を見る目を養い続けるようにすることこそおとなの使命だ……これもまた別のやり方であろう.つらくて悲しい難問題であるが,私はできれば後者を選択したい.なぜなら,子どもにとって‘学ぶ’ということは,とりもなおさず‘生きる’ということそのものにほかならないと思うから.
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