教育学入門講座 教育・学習のしくみとはたらき・10
教育方法について
森部 英生
1
1群馬大学
pp.324-330
発行日 1986年4月25日
Published Date 1986/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908235
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学校と授業
■テクニック
大学に赴任して間もない若い教官は,講義にすこぶる熱心で,十分な時間をかけて準備を整え,講義ノートなども詳細に作成して臨むのが通例である.あらかじめ半年とか1年の講義計画を立て,その計画を遂行するために少々の風邪ぐらいでは休講せず,あげくの果ては夏休みや冬休みに補講をすることもある.それが学生たちには大いにありがた迷惑であることを,彼は浅はかにも全然気付かない.この時期,新任教官にとってはまだ講義が大きな喜びなのである.
大学のセンセイは,講義で検定教科書を使うことを義務づけられているわけでもなく,自分の得意なところだけを(勝手に)喋りまくることが実際上許されるから,授業に喜びと満足を見出しやすい環境にいると言える.‘教育心理学’という講義題目で半年間チンパンジーの話だけする人もいれば,教育委員会あたりから依頼されたアンケート調査の集計を手伝わせるだけの‘教育調査特講’や,研究室の本棚整理と老教授の肩たたきに終始する‘幼児教育の諸問題’もある.かくて大学の授業には,看板に偽りがある場合が少なくないから,学生諸君はくれぐれも注意を要する.
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