教育学入門講座 教育・学習のしくみとはたらき・8
教育上の懲戒について
森部 英生
1
1群馬大学
pp.196-202
発行日 1986年2月25日
Published Date 1986/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908215
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‘懲戒権’の行使
■オシッコ
同僚の助教授に石部金吉の子孫みたいな人がいて,彼は講義のたびに,押印したカードを学生ひとりひとりに手渡し,学籍番号やら所属学科やら氏名やらを記入させ,講義終了時にそれを1枚1枚回収する,というやり方をとっているのだそうだ.ところがある日,欠席した友人を出席にしようと,ドサクサに紛れてカードを複数枚受け取ろうとした女子学生を現認したので,怒った助教授先生,彼女を研究室まで連行し,厳重な注意を与えたところ,さめざめと泣き出してしまったという.‘ちとやり過ぎたかなあ’とぼやきながらも,しかし教師をごまかそうとするなど断じて許せないと,盛んにいきまいていた.
私だったらさしづめ,その女子学生の友人を思いやる心を讃え,研究室に招き入れてコーヒーでも飲ませてやるに違いない.そもそも私は,学生に出席を強要して聞かせるほどの講義はしていないから,出席カードを配るといったこと自体をするつもりも全くない.自らに対してと同様,他人に対しても寛大(ルーズ)であるのが私の身上である.
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