教育学入門講座 教育・学習のしくみとはたらき・1
教育と教育学について
森部 英生
1
1群馬大学
pp.450-456
発行日 1985年7月25日
Published Date 1985/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908125
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
開講の弁
■不純な動機
論文・著作をものするときは,ただひたすら学界なり社会なりの進歩に貢献しようとの動機に出るべく,この崇高な任務を見失い,もっぱら私利私欲のために研究成果を公表するなどはもってのほか—これは,いやしくも研究に従事する者に向けられた,反論の余地なき基本的な倫理であり心得である.まことに,研究者はすべてこのようでなければならず,またこのようでありたい.
はなはだ遺憾ながらしかし,論文・著作の筆をとるときに学者センセイの胸をよぎるのは,必ずしもこうした清く正しい動機だけとは限らない.むしろそれと同時に,自己の存在を世に知らしめたいとか,業績を上げて早く昇任しようとか,原稿料をローン返済の一部に充当しようとか等々,野心的なものから小市民的なものまで,様々の思い・プランが心をかすめるのである.これを‘不純’と決めつけて,近ごろの学者センセイ連中にはロクな者がいないとやっつけるのは,たぶん大多数の正義感情にかなった批判ではあろうけれども,しかし,東京・柴又の寅さんのセリフを借りれば,‘それを言っちゃあオシマイよ’.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.