教育技法研究 目で見る看護史—魅力ある看護史の授業をめざして・1
日本看護史への目ざめ
高橋 政子
1
1看護史研究会
pp.432-435
発行日 1983年7月25日
Published Date 1983/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907844
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看護活動の宗教的背景
日本の近代以前の古い看護は,中世ヨーロッパのキリスト教によるシスターの看護のように,主体性をもった独立した形はとらず,近代に至るまで医療・福祉の中に未分化の形で存在した.また,源流は仏教看護にあったとはいえ,その歴史に残る医療活動の大半は男性僧侶の手によっている.言葉を換えていうなら,日本人の生活するところに古くから女性による肉親の看護はあったとしても,看護を専門に社会的に活動した女性を見いだすことはできない.仏教が最も盛んに医療・福祉活動を実践したという鎌倉初期においても,尼僧のこうした活動については不明である.
仏教による社会活動の衰微した安土・桃山時代に,仏教伝来からちょうど1000年を経てキリスト教が伝来し,キリスト教文化とともに西欧の医学(南蛮医学)が移入されたが,キリシタン弾圧が強化されるに及んで,その医療活動も急速に影を没した.したがって,ともに存在したはずのキリシタン看護の実態を明らかにすることはできない.
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