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対象の全体像への接近のために[5]
川島 みどり
1
1東京看護学セミナー
pp.375-378
発行日 1982年6月25日
Published Date 1982/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907690
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看護婦である前に1人の人間としての見方を育てる
脊損の17歳の青年の,反抗的で攻撃的な言辞や行動に対して,看護婦としての対応をあれこれ考える前に,その青年の気持ちやおかれた状況を,ありのまま受け入れることを出発点にすべきであると,前号では述べた.そして,彼自身の内面の葛藤を否定的に見たり,同情するのではなく,その葛藤の中で彼なりに努力している面に対して,積極的な評価を惜しむべきではないことを述べた.
また,共通の事例を前にして,看護婦と,看護婦ではない人の見方には相違があったことも述べた.看護婦の思考プロセスは,彼の言動を‘問題’としてとらえ,なんとかして,その要因を追求しようとする.そして,いくつかの要因,すなわち両親の離婚歴を背景とした,患者の生育歴がクローズァップされる.父親の欠損が問題となる.また,患者の受傷前に所属していたグループ(暴走族)に対する,社会の一般的な批判を通して患者を見てしまう.この患者の現在の事実はすべて,この患者の背景と関係があるとする見方である.
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