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対象の全体像への接近のために[3]
川島 みどり
1
1東京看護学セミナー
pp.247-249
発行日 1982年4月25日
Published Date 1982/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907673
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前号でケアに生かす情報収集の視点と方法について述べ,対象を理解するために,その全体像—病像,生活像,社会像(人間像)への接近方法を簡単に述べた.ここで教育的に問題となるのは,こうした分析方法を用いて対象の状況を理解しようとして,時に分断的な思考に陥りやすいということである.そもそも全体を見る目がいびつにならないように,各領域からの接近を試みたはずなのに,病像は病像としてのみとらえたり,生活像だけを切り離してしまったりしてはいないか.病気や病状に由来する生活行動の範囲への影響や,社会・経済的状況と発病や闘病態度との関連を見ていくことを忘れはしないかということである.
そこでこうした見方は,見落としを避ける上での仮の見方であることを,いつも意識しておく必要がある.そうでないと,患者のある状態を,これは病像としてとらえるべきか,生活像にすべきかで悩むといったことが生じてしまう.事例を通して対象のもつ問題を探る場合に,しばしばこうしたことを経験する.したがって,対象の全体像に接近するためのもう1つの側面(あるいは前提といったほうが妥当かも知れない)についてもふれておきたい.
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