教育人間学の探求・5
自我の解体と自己形成
伊藤 順康
1
1東京理科大学
pp.323-327
発行日 1982年5月25日
Published Date 1982/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907685
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総体としての発達疎害
1960年代から70年代にかけて,日本の教育が子供たちにもたらしたものは,単に質の飛躍的な上昇による理解度の低下だけではなく,生活環境や社会環境の変化に伴って,身体的能力の低下から精神的な発達のゆがみにまで及んでいる.昨今,かなり大きな問題となってきた学校における非行・暴力問題の低年齢化も,これらの大状況が具体的な形をとって表面化したものにほかならない.
さて,前稿においては,文化としての体の未発達について考え,その結果としてアイデンティティの未確立が青少年の間に普遍的な問題としてみられるようになったことをみた.ここで問題なのは,これらの問題が限られたごく一部の問題として存在するのではないことである.学業に適応できない生徒が,学校生活に意欲を喪失し,クラスやクラブに自分の帰属集団を見い出しえない時に,その総体的な発達がゆがんだものにならざるをえないことは,見やすいことである.
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