巻頭言
自我としてのBody Image
山﨑 研志
1
Kenshi YAMASAKI
1
1りふ皮膚科アレルギー科クリニック,院長
pp.2087-2088
発行日 2022年12月1日
Published Date 2022/12/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000003666
- 有料閲覧
- 文献概要
皮膚疾患が,他の診療科の疾患と異なる決定的な違いは,皮膚疾患の症状・現症が患者自身に認識できることである。多くの内臓器の疾患では,痛みや発熱などの自覚症状はあるが,病変の状態などの他覚的所見は患者自身には把握できないことが多い。健康診断で異常値が指摘された場合には,自覚症状すらない場合もある。一方で,皮膚科外来を受診する患者は,自覚症状の有無にかかわらず,皮膚の状態や症状が患者自身にも視覚的に確認できる。「自我としてのBody Image」ともいうべき,患者ごとに通常と考える皮膚状態があり,そのイメージが変化することを忌避する。目に映る視覚情報をもとに,ネット情報などで受診前にすでに患者自身の「自己診断」や「理想とするBody Image」を秘めて受診する患者も多い。正しい自己診断にたどり着いている患者は,診療がスムーズに進むので,正しいネット情報に感謝する。誤った自己診断にたどり着いた患者には,誤った自己診断の否定・修正から始める必要があり,余計な時間をとることになる。誤った自己診断や病態理解は,必ずしもネット情報からのみ得ているのではなく,医師から与えられている場合も多い。前医の行為を否定するのは簡単であるが,安易に前医の診断や治療を否定することは,医療行為全体への信頼低下につながる。「前医の治療経過を見ることができるから,“後医は名医” になれるのですよ」と誤魔化しつつ,正しい方向へ誘導するように心がけている。
Copyright © 2022, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.