特別論稿
思想の生命
市倉 宏祐
1
1専修大学
pp.13-29
発行日 1978年1月25日
Published Date 1978/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907169
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I.‘考える’ということ
わたくしが編集部の方から依頼されたことは,病気といったものの人生における意味,あるいは病気と不可分の関係にある看護といったものの本質を考えてみることであった.そこで看護に関するいろいろの優れた文献を用意していただいて読ませていただいた.いままで余り知ることのなかったことであったので,たいへん興味深かったし,またあらためて看護という仕事の重さと厳しさを教えられるとともに,この仕事に携わるひとたちに求められている誠実さを,しみじみと感じさせられた.
しかし,わたくし自身がこうした問題についてなんらかの意味ある考察をなしうるのか,といったことを考えたとき,やはりもっと勉強してからでなければならないような気がしてならなかった.わたくし自身,病気についてシーリアスな経験がないため,あえてこれを語るとなると,実感のない空疎な議論に終わるように思われたのである.だから,ここでは病気とか看護といった問題を考えるときにすでに前提となっている‘考える’ということそのことが,いったいどんなものであるのかといったことを問題にして,そもそも‘考える’ということの意味を検討してみることにしたい.病気や看護をどう考えるかということについては,この‘考える’ということの意味が明らかになったうえで,みなさん自身が考えてくださることを期待したい.
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