連載 社会思想史の旅・14
レジスタンスとその思想
田村 秀夫
1
1中央大学経済学部
pp.53-57
発行日 1969年12月1日
Published Date 1969/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908937
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第2次大戦の傷痕
第2次大戦は,太平洋戦争を含めて,人類の5分の4をまき込み,1億以上の兵力を動員した。ヨーロッパだけについてみても,死傷者の概数はドイツ950万,イギリス98万,フランス75万,イタリア78万に達した。戦後20年以上を経過した現在でも,ヨーロッパの各地に,深い爪跡を残している。戦場となったり,空襲を受けたりした都市の傷痕もまだ完全には復旧していないし,戦争による犠牲者の記念碑は,まだ生ま生ましくわれわれの胸を打つものがある。
第2次大戦に特徴的な犠牲者はユダヤ人であり,アウシュヴィッツをはじめとする大量虐殺のモニュメントは周知のものだが,そのほかにも,ささやかな記念碑が各地に散在する。たとえば,ライン下りの終点ケルンは,中世のハンザ同盟都市なので,観光案内所で聞くと,「ハンザ広場」に当時の城壁の一部が残り,小さい記念碑もあるという。公園になっているその広場の木蔭に見出した記念碑は,ハンザ同盟の歴史を物語るものではなくて,子供の死体を抱いた母親の銅像の傍に横たわる花崗岩の切石には,つぎの文字が刻まれていた。
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