連載 周産期の生命倫理をめぐる旅 あたたかい心を求めて・25
生命倫理の背景にある「連続と不連続の思想」(Ⅰ)
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学
pp.64-68
発行日 2015年1月25日
Published Date 2015/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665200104
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はじめに
すでに倫理の「倫」は仲間という意味であることを述べたが,共に生きている仲間内で生命に関する考え方に齟齬が生じた時,それを擦り合わせる考え方が生命倫理である。その擦り合わせの過程において,より良好な治療成績やより高い経済効率といったEBM(evidence based medicine)だけでなく,相手のことを自分のことのように考える「あたたかい心」がその背景になければ,人間味を失った冷たい判断に陥る。
「あたたかい心」とは,単に同情や憐れみ(sympathy)といったレベルを超え,相手の苦しみ・痛みを自分の苦しみ・痛みと感じること(empathy)のできる心である。その「あたたかい心」とは,弱い生き物である人類が生き抜くために,進化の過程で勝ち得た最も大切な宝であり,その「あたたかい心」を育むのが「連続と不連続の思想」であることから,本稿ではこれを取り上げる。
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