特集 昭和40年度看護教育研究会夏期講習会集録
自己を生かす
森 進一
1
1関西医科大学
pp.36-41
発行日 1965年11月1日
Published Date 1965/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905944
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はじめに
「自己を生かす」という題は,たいへんばく然としていてどういうことを言うのかというご懸念があるのではないかと考るが,なるべく哲学と文学と両方のまとまったお話をとのご依頼で,実のところ私自身も当惑したのであります。
今でこそ哲学と文学とは,サルトルとかいろいろ向こうの人たちを考えたばあい,非常に接近した親近性があるように考えられるが,これを古典的な純粋なかたちで考える場合,哲学と文学とは決して仲のいいものではなく,たとえばギリシヤの哲学者プラトンの「理想国」の中には,「ホメロス追放」の章があって,人間がほんとうに正しく自分を生かして幸福な生活を送るためには,いつも正確に物事を知ることが大切であるから,悲しみとか喜びとかいう人間の感情を極端に誇張ばかりしている詩人などは無用である。理想国家からは詩人を追放したほうがいいという,例のプラトン解釈でたいへん難関になっている個所がある。
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