連載 ほんとの出会い・36
物を生かし,人を生かし,地域を生かす
岡田 真紀
pp.242
発行日 2009年3月15日
Published Date 2009/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101288
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- 文献概要
昨年末の12月31日,東京の日比谷公園に突如,村が出現した。「年越し派遣村」である。この村は1月5日に閉村し,東京都が住まいをもたない人々を一時施設に保護した。その1つが私の家から自転車で10分ほどの所にあった。地域の人の間から何かできることはないか,という声が上がり,衣類やおもちを入れたお汁粉を差し入れることになった。すると同じ区内の精神障害者小規模作業所が衣類の担当に手を上げた。
差し入れ前日の夕方,衣類の整理の手伝いに行ってみた。その作業所―といっても「クラブハウス」と名づけられた赤レンガのかわいい住宅―の中にはジャケットやフリース,シャツなど衣類の山ができていた。これがなんと数時間で集まったものだと言う。その日の午前中,スタッフが手分けして作業所の支援者に電話をしたら,500点以上の物品があっというまに届けられたのだ。現金のカンパで新品の下着と靴下を買いそろえ,住む場所もない,着の身着のままの人たちに届けられた。たくさんの人のあたたかい気持ちとともに。
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