新カリキュラム講座 一般教養課目・2
美学編II
井村 陽一
1
1早稲田大学
pp.42-45
発行日 1967年5月1日
Published Date 1967/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905819
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II 美学の対象とその自覚の歴史的展開
美学の研究対象はいうまでもなく〈美〉と〈芸術〉である。他のすべての問題は結局ここに帰着する。美しいものも芸術も人類の誕生とともにあったわけだが,美は美として,芸術は芸術として自覚されるようになるには,人間の文化にそれだけの条件が揃うのを待たねばならない。まして学問的な主題としてこれらが十分に展開されるためには,古代から中世を経て近代に至る,美意識と芸術の変遷の歴史が必要であった。現在の美学上の重要な問題は,すべて一定の歴史的な状況のもとに発生し,歴史とともにその解明が深く広く発展させられてきたものである。もちろんそれは芸術史の各段階とも多く対応するのである。したがって有力な美学者で,自己の学説を述べる前にまず美学史の展望をし,問題の歴史的な位置づけを試みる人は多い。
もとより美学史の詳述はここでは無用のことであるから,〈美〉と〈芸術〉の自覚の史的展開に関連して,美学史的な要点に一通り触れることにしたい。(次の章で現代美学の基本的諸問題を概観することにする。)
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