Derm.2001
皮膚科医がかっこよくなるためには/病名の美学
橋爪 秀夫
1
,
山田 伸夫
2
1浜松医科大学皮膚科
2山梨医科大学皮膚科
pp.37
発行日 2001年4月15日
Published Date 2001/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412903540
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勤務医として病院で働いていると,一度は他科の医師や看護婦から,“なぜ,皮膚科医になったか”の説明を求められることがある.その行間には明らかに皮膚科医という職業に対する蔑みを感じる.皮膚科は,楽してお金もうけできる科であり,医師としての志の低い者が選択する科であるのだという一般認識を反映しているのであろうか.年々,専門化していく医療のなかで,皮膚科医はスキン・ドクターやエステティシャンになってしまうのだろうか?
皮膚科勤務医の重要な役割は,皮膚を通して患者の病気について考える点にあると私は思い込んでいる.紅斑の乏しい帯状疱疹をみたら,その患者の免疫不全を疑ったり,ひどい痤瘡や多毛をみたら内分泌異常を考えたりしながら外来をやっていると,患者の基礎疾患が判明することがある.以前,一般病院に勤めていた時に,3歳の女の子の右上眼瞼に黄色の扁平皮疹があると母親が外来に連れてきたことがあった.生まれつきの母斑ではないと言う.最近,逆さ睫毛のため眼科にいっている以外,特に病気はない.逆さ睫毛というのが非常に気になった.もしかして眼球突出のためではないかと思い,小児科に相談,頭部の単純X線写真をとったところ,多発性円形陰影を認めた.Histiocytosis-Xだったのである.相談した小児科医の驚きと尊敬の眼差しを私は今でも忘れていない.患児は当科初診後3日目に専門病院に紹介され,治療経過も良いと聞いている.まさに,皮膚科医名利につきる症例であった.こんなことはたびたびあるわけではないけれども,日々努力を惜しんではならないのだと私自身肝に命じながら,かっこいい皮膚科医を目指して診療を続けているこの頃である.
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