連載 コミュニケーション講座・9
コミュニケーションの内容(2)
杉 政孝
1
1立教大学
pp.41-43
発行日 1967年2月1日
Published Date 1967/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905771
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
3 看護の理念
これは看護という職業に対する基本的な考え方であり,看護婦の職業意識を基本的に決め,職業人としてのいわゆるバックボーンを形成する考え方である。かつてはこれを看護倫理と呼んだこともあるが,倫理という言葉は道徳とほぼ同義語に使われるだけあって,外部から強制的におしつけられる基準のような感じが強い。しかしどのような状況のもとでも,真に看護の名に値する良い看護ができるような看護婦の姿勢は,そのように強制的に外部から与えられた基準の枠組によってではなく,彼女の心の中から自発的に形成された自信と信念としての看護理念によるのである。
しかもかつてわが国の看護婦が医師の診療業務に対する単なる介助職であったのに較べて,現在では少なくとも部分的に専門職の範疇に属する新しい職業的な地位を与えられているのであるから,その基本的なよりどころとなる看護の理念も,古い看護倫理とは違ったものでなければならない。医療全体が,かつて,宗教的な慈善と奉仕の活動であった頃には,看護も必然的に何の報酬も期待しない奉仕と献身の理念によって支えられていた。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.