卒業論文と指導
卒業論文の内容と形式—講評とその指導
杉 政孝
1
1立教大学
pp.28-31
発行日 1966年8月1日
Published Date 1966/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905684
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高く評価したい真摯な追求態度
この論文の最大の価値は,看護の本質を真正面から徹底的に追求しようとした学生らしい真摯な姿勢にあろう。わが国の看護教育の年限が,専門職の教育としては短期間であることと,多くの看護教育機関の開設主体が病院であることのために,看護教育においては技術的な実務教育がカリキュラムの中心を成すことが多い。しかし,戦後における社会体制と文化的価値体系との変革過程の中で,主としてアメリカ的な看護理念の導入を契機として,看護は専門職へと変質しつつあり,看護の本質とその理念の近代化が課題となっている。この段階での看護教育も,したがって実務的な技術教育に終始するだけでは不十分であり,その基盤となる理念が本質論的に追求されるべき時であろう。その意味で,あらためて.看護の本質を問うたこの論文の意図は肯定されてよいものである。
論文全体の構想も,看護活動の個別的な側面にこだわることなく,看護の主体および客体である看護婦と患者を,肉体的精神的社会的な側面を総合した全体存在として相互に関連させ,さらにその関係を歴史的社会的文脈の中に置いて眺めようとする全人間的包括的構成をとっている。これは,看護の本質を社会的役割として問おうとするこの論文の構想として妥当なものである。
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