連載 コミュニケーション講座・3
コミュニケーションのむずかしさ(2)
杉 政孝
1
1立教大学
pp.73-76
発行日 1966年6月1日
Published Date 1966/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905646
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
前回,4つの項目に分けて述べたコミュニケーションのむずかしさは,いわば技術的な問題を主題としていた。すなわち,伝えられようとする意味が,なんらかのシンボルによって象徴されなければコミュニケーションは成立しないから,送り手および受け手の両者が,このシンボルを適当にしかも共通に使えるということが,どうしても必要になるのであり,これらのシンボルを目的にそうように使いこなせる技術的なむずかしさがそこに発生してくるのである。
このような意味での技術的なむずかしさは,コミュニケートされるものが,まとまった長い文章でなく,個々の単語や概念を伝えようとする場合にも,なおつきまとう基本的な問題であり,コミュニケーションのむずかしさとしては初歩的なものである。しかし,コミュニケーションは,いうまでもなく単に語句や個別的な概念の伝達だけで足りるのではなく,実はそれらの語句や概念をさまざまに組み合わせて成立する。まとまった意味をもった長い文脈の伝達こそがコミュニケーションの最終的な目的である。そうなってくると,単なる単語や語句の伝達の場合に生ずる初歩的なむずかしさに加えて,新たな困難な問題が発生してくる。それはコミュニケーションの意味的ないし内容的なむずかしさというべきものであり,見方によっては,それはコミュニケーションにおける危険性ともいえるものである。今回はこの問題を主として考えてみたい。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.