連載 教育心理学講座・4
教室での学習形態と指導法
北尾 倫彦
1
1大阪学芸大学
pp.59-62
発行日 1965年7月1日
Published Date 1965/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905485
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
教育実践の場においては,一人一人を生かす教育ということが標語のようになっている。生徒たちの能力や個性はそれぞれ異なっているから,それらに応じた学習をさせるべきであることは個人差に応じた教育とか個性を伸ばす教育という名の下に主張されてきており,今日の教師たちが日々の実践の中で留意している重要な問題点である。
ところがどんな種類の学校においても,学習指導は集団を単位にして行なわれる。そして教室は学習の行なわれる地理的場であると同時に,学習指導の形態を規定する単位になっている。そうするとこのような集団的学習指導の中で,一人一人の能力差や個性に応じた指導をするということはたいへんむずかしい事柄になってくる。いわゆるよくできる生徒だけを対象にした授業がなされ,ほとんどの生徒たちが無視されてしまつたり,引込み思案の生徒や発表能力のない生徒はいつも教室の片すみで無駄な時間を過ごすこともある。生徒たちが年長になり,看護学校の生徒ぐらいになると,忍耐力があるので表面的には学習活動をしているかのような態度を示すことができるが,本当に学習がなされているかどうかは疑問な場合もある。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.