教育トピック
教師は専門職か
沼野 一男
1
1東邦大学
pp.44-45
発行日 1965年7月1日
Published Date 1965/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905482
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●教師は「教える」ことの専門家
教師は専門職であるといわれている。では,なぜ,あるいはどういう点で教師は専門職なのかときかれれば,すぐには答えることがむずかしい。教師になるにはその教えるべき教科について,また教育原理や教育心理学などについて一定期間の教育を受けなくてはならないことは事実である。しかし,専門教科やいわゆる教職科目について一定の教養を持っているということが,そのまま教師が専門職であることの保証になるかどうかは疑問であろう。
たとえば,看護学の教師を考えてみよう。彼女が看護史や看護倫理や各科看護法などについてどれだけ深い学識や臨床経験を持っており,さらに教育原理や教育心理学を学んでいるとしても,それだけで彼女を専門職としての看護学教師といってよいであろうか。彼女は看護学については専門家といえるかもしれない。臨床看護婦としてもヴェテランであろう。また,教育原理や教育心理学に関しても専門家として通るだけの深い学識を持っているかもしれない。だが,看護学者,ヴェテランの看護婦,教育学者あるいはそれらを兼ねた人がただちに看護学の教師(専門職としての)になれるとは限らない。彼女が看護学の教師として,その専門性を他に認めさせるには少なくとも「教える」という仕事の専門家であることを示さなくてはならないのである。
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