教育のひろば
教職の専門性
大嶋 三男
1
1東京学芸大学
pp.1
発行日 1964年7月1日
Published Date 1964/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905309
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少しかたい標題で恐縮だが,このごろよく,本職と素人の区別がつかなくなってきたと言われている。おそらくそれは,基礎も修練もあまりないようなハイ・ティーンの人たちが,テレビやラジオのマス・コミの媒体を通じて,またたく間に,ひとかどの歌手として通用するというような世相から言われるのだろうが,こういう傾向は,現代の社会的特徴の一つだとみてよかろう。
それにつけても,話しが教育界のことになると,事態はもう少し深刻なことになる。最近よく,今日の学校では教育不在だと言われている。ありようは,進学を目指したテスト教育がもっぱらで,全人的な教育が行なわれていないというわけである。それだけならまだいいのだが,教育熱心な家庭では,家庭教育本来の子どもの躾はともかくとしていわゆるお勉強に身を入れすぎて,教師の本来なすべき仕事が母親の手に移りつつあるとすら言われている。こうなると,教育という領域では,本職と素人の区別がつかないどころではなく,素人が本職の仕事にとってかわるということになりかねない。
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