連載 〈教育〉を哲学してみよう・11
専門性を育成するために(2):「専門職性」と「専門性」
杉田 浩崇
1
1広島大学 教育学部
pp.536-540
発行日 2020年6月25日
Published Date 2020/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201514
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看護では、看護師を「専門職」として位置づけることで、その地位を高めてきた歴史がある。この取り組みには医師に対して相対的に低い社会的地位しか与えられてこなかった看護師の存在意義をあらためてとらえなおそうという側面や、社会的なニーズ(医療人材の不足やチーム医療の推進など)に応じるという側面もあるといえるだろう。
当該の職が「専門職」なのかどうかという問題は、学校教員についても議論されてきた。医師や弁護士のような高度で専門的な知識や技能が認められ、従前から高い社会的地位を与えられてきた職業とは異なり、学校教育には医学や法学に見られるような独特の専門用語は少ないし、教育一般については誰もが担いうるものであるため、その専門性が見えにくい。だが、専門的な知識や技能が求められるのは、「専門職」として社会から認められた職業に就く者に限られるわけではない。医師や弁護士といった専門職に就く者以外に、伝統工芸の職人や先端的な技術をもつ町工場の従業員などにも専門的な知識や技能は求められるだろう。他方で、専門職として社会的にみなされている職業のなかには、何が専門的知識・技能なのかがはっきりしない職業もあろう。
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