特集 現代の看護学生
未来と現実の橋わたしを—現代看護学生への教育課題
杉 政孝
1
1立教大学
pp.3-6
発行日 1964年7月1日
Published Date 1964/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905310
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はじめに
看護婦の職業的格付けが戦後のわが国において高くなり,アメリカにおける看護婦の高い社会的地位に刺激されて,少なくとも専門職に準ずる地位を期待するようになるとともに,看護婦の養成機関に対しては,そのような社会的地位にふさわしい内容と資質を身につけさせるために教育の充実が要請される。しかし他方,わが国の産業構造の急激な変化に伴って若年労働力の不足が顕在化し,その影響を受けて看護婦の絶対数が不足し,目先の需要に応ずるための短期的充員の責任をも負わされる。さらに,かつて旧軍隊組織に準ずる厳格さでかなり権威主義的な方式で行なわれていた教育の形態は,個人の人間的育成と民主的組織を軸とする新らしい方式に転換することを要求された。
このように多面的な要請を一手に引き受ける看護教育のあり方はどのようなものでなければならないのか。当面の目標と長期的な目標との調整をどのようにまとめるべきか。現代人としての教養と専門職としての特殊な技術や知識の配分はどう考えるべきか。インターン制度の改革を導火線として,大きく揺れ動こうとしている医療社会構造の合理化過程において,看護婦の地位や役割はどのように変化し,それに応ずるための看護教育のあり方はどう変わらねばならないか。このように考えてみると,現在の看護教育はその組織についても内容に関しても大きな変革期にあり,新たな期待をかけられているといえよう。
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