青年心理学講座・3
孤独感と自覚
辰見 敏夫
1
1東京学芸大学
pp.47-50
発行日 1964年6月1日
Published Date 1964/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905306
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1.成長の悩み,孤独感
青年期においては,一般に女子のほうが男子よりも12年ほど成長が早い,という事実は注目しなければならない。というのは,青年にとって,自分の成長のテンポを知るだけでは不十分であり,同年令の異性の成長のテンポとその違いに応じ,それに合わせて行動するにはどうすればよいか,という二つの課題を負うことになるからである。
とにかく,女子は背の高さも体重も,増加していくテンポが早いわけであるから,同年令の男子よりも,年をとっているように見えるわけであり,いわばふけているわけであり,そこから男子にも女子にも問題がおこってくる。男子にしてみれば,同年令の女子が女性らしさを増し,体力においても一歩先んじている。という事実は劣等意識をおこさせる。さらに,女子はどんどんきれいになってくるのに,なんとなく男子はうすぎたない,というような事実も,この劣等意識にわをかけることになる。また,女子にしてみれば,同年令や同級の男子は,自分より年下の子どものような気持になり,高校生や大学生のなかには,同級生の男子をつかまえで,「坊や」などと呼んでいる場合をよくみうける。したがって,女子の場合に,中学生は高校生,高校生は大学生,大学生は社会人というように,一段年令の上の男子に対して,接近したいというあこがれを持っけれど,年令の上の男子は相手にしてくれない。ここで男子も女子もともに孤独感を持つ一つの理由がある。
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